2018-01-01から1年間の記事一覧

誤振込への法的対応

誤振込をしてしまった場合、振込先口座の金融機関、支店、口座番号については把握できるものの振込先口座の名義人の漢字氏名や住所や連絡先が不明である場合が殆どです。銀行実務では、振込依頼人が口座を開設している仕向銀行に対して、振込先口座が開設さ…

改正債権法の勉強におすすめの書籍

平成32年(2020年)4月1日、民法の一部を改正する法律(改正債権法)が施行されます。民法という重要な法律の120年ぶりの大改正ですので、法律実務に携わる者としては正確に対応できるように入念な準備する必要があります。契約書作成や契約締結…

特許法74条1項に基づく特許権移転登録請求訴訟の要件事実

平成23年に特許法が改正されるまでの間、冒認出願されて発明者でない者に特許権を取得されてしまった場合、真の発明者としては、無効審判を請求する他なく、和解に持ち込んで特許権を取り戻すことを試みるしかありませんでした。無効とすれば誰でも特許権…

共有特許権の共有物分割請求と不実施補償料

特許権が共有である場合、共有権者の1人は他の共有権者に対し、共有物分割請求(民法256条)を行使することが可能です。特許登録令33条において、特許原簿に分割禁止契約を記載することが可能であると定められていることからも、分割そのものは禁止さ…

再雇用後の労働条件の相違(最高裁平成30年6月1日判決・長澤運輸事件)

再雇用後における労働条件の相違と労働契約法20条に関する問題について、平成30年6月1日、最高裁判決が言い渡されました(平成29年(受)第442号 地位確認等請求事件・長澤運輸事件)。なお、同日、契約社員と正社員の労働条件の相違と労働契約法…

第三者委員会の委員に求められる職責

企業が不祥事を起こした場合、企業は弁護士等に依頼して第三者委員会が立ち上げさせ、当該不祥事の原因と今後の対策を分析させて公表することで信用を回復させようとすることがあります。外部の専門家が調査に入り、直接の原因から企業体質等の間接的な原因…

伝聞法則のポイント(平成27年決定での要証事実の認定方法)②

以前に投稿した伝聞法則の記事では、平成17年の最高裁決定を中心に実質的な要証事実の分析手法を説明しました。 tangleberry.hatenablog.com この記事に関連し、最高裁平成27年2月2日決定(以下「平成27年決定」といいます。)では、検察官の設定し…

司法研修所編『デリバティブ(金融派生商品)の仕組み及び関係訴訟の諸問題』一般社団法人法曹会/デリバティブ取引を本質から理解するために

「デリバティブ(金融派生商品)の仕組み及び関係訴訟の諸問題」の書評です。

数理法務概論 - Analytical Methods for Lawyers

久しぶりに刺激的な書籍に出会いました。 「数理法務概論」はアメリカのロースクール等で使用されているテキストの翻訳で、経済学、ファイナンス、会計、統計等の基礎が説明されています。難解そうなタイトルではありますが、本文は多数の事例を挙げながら丁…

自然血縁関係と父子関係

凍結受精卵と父子関係に関する報道 大阪高等裁判所は、平成30年4月26日、男性の妻が凍結保存していた受精卵を男性に無断で利用して子を出産したことを受け、男性が提起した親子関係の不存在確認訴訟の控訴審において、男性の請求を却下した奈良家裁の一…

会社分割と債権者保護手続

会社分割 会社分割とは、ある会社がその事業に関して有する権利義務の全部または一部を他の会社に承継させることをいいます。このうち、吸収分割とは、株式会社又は合同会社がその事業に関して有する権利義務の全部又は一部を分割後他の会社に承継させること…

印紙税

印紙税とは 印紙税とは、経済社会における各種の取引に伴って作成される文書に対し、その作成者に課される国税をいい、課税文書を作成した際に課される税金です。印紙税は、課税文書の作成者が(印紙税法3条1項)、指定の金額の収入印紙を文書に貼り付け(…

事業移転手法の比較

事業移転の手法 事業を移転するためには、①吸収分割(会社法2条29号)という手法と、②事業譲渡の手法を用いることが考えられます。会社の事業を他の会社に移転するという点で同様の経済的効果を持つものですが、要件が異なり、その簡便さや迅速さを重視す…

忘恩行為による贈与の撤回

贈与の撤回の可否 贈与契約は諾成契約であるものの、書面によらない贈与、つまり口頭で贈与の約束をしても贈与者はいつでも撤回することができます(民法550条)。しかし、既に履行された部分については撤回できません(民法550条但書)。そうすると、…

エスクローサービスに対する規制

エスクローサービスとは 商取引に際し、買主から信頼できる第三者に代金を預託させ、商品や役務の提供の完了が確認された段階で第三者から代金を売主に支払うという第三者預託のサービスを「エスクローサービスと」いいます。近年ではインターネット上でユー…

「なぜ悪い人の弁護をするのか」という質問

弁護士だと名乗ると「なぜ悪い人の弁護をするのか。」と質問されることがあります。 学生時代に弁護士を目指すと話した際、祖母から同じような質問をされて答えに窮したことがあります。教科書通りに「適正手続の理念」を説明しても抽象的過ぎて伝わりにくい…

相手方が郵便物を受領しない場合の意思表示の方法

法律事務所では一般的に用いられる手法ですが、企業の法務部の方でご存知でない方も多いように思われますので、「相手方が郵便物を受領しない場合の意思表示の方法」をご紹介します。

競落物件の登記名義が変更されていない場合の固定資産税

競落物件に関し、競落人が所有権移転登記をしないことにより固定資産税の支払いを免れているケースがあります。

示談での三者間相殺合意の定め方

民法が規定する相殺(民法505条)では、対立する債権を有する2当事者間の相殺を予定しており3人以上の当事者間での相殺を予定していませんが、契約自由の原則からして、3人以上の当事者間で対立関係にない債権同士を相殺を合意することも可能であると…

マンション建替え手続

マンション建替え手続の概略 マンションの建替えは居住者の住環境に重大な影響を与えるため、区分所有法上、極めて厳格な手続が規定されています。建替えを実施するにあたっては、まず手続の概略について確認し、再建建物の基本設計、取壊し及び再建建物の建…