第三者委員会の委員に求められる職責

 企業が不祥事を起こした場合、企業は弁護士等に依頼して第三者委員会が立ち上げさせ、当該不祥事の原因と今後の対策を分析させて公表することで信用を回復させようとすることがあります。外部の専門家が調査に入り、直接の原因から企業体質等の間接的な原因まで真相を究明し、これをふまえた今後の対策を会社と世間に公表し、これを企業が受け入れることで株主や取引先や消費者や従業員や社会からの信用を取り戻すことができます。

 


 しかし、このような第三者委員会の設置には法的根拠や規制がなく、設置要件、評価手法、公表方法が法的に定められているわけではありません。あくまで企業が法的規制によらずに自主的に解決するための手法に過ぎないのです。

 

 それゆえ、第三者委員会が立ち上げられたはいいものの、経営陣の顔を立て、角の立たない報告書が公表され、寧ろ株主や世間の反感を買う場合もあります。第三者委員会の委員に選任された弁護士の報酬は企業から支払われますので、利害関係のない「第三者」とはいえ、委員が報酬の出所に配慮することは容易に想像できます。委員がどこまで踏み込んで調査するかは、当該委員の職業上の倫理的判断に委ねられています。委員が及び腰になって問題点が明らかにされることなく、形式的に第三者委員会の報告書が公表されて有耶無耶にされてしまっては、寧ろ第三者委員会の設置は有害ともいえます。


 これを受けて日本弁護士連合会は、「企業等不祥事における第三者委員会ガイドライン」を策定し、一定の指標を設けました。


 また、久保利英明弁護士らが立ち上げた第三者委員会格付け委員会では、第三者委員会の報告書について格付けを行い、企業法務の専門家による批判に晒し、第三者委員会の社会的な信用を高めようと試みています。


 第三者委員会の委員に選任された弁護士としては、真の依頼者が経営陣ではなく、企業自身と企業のステークホルダーであることを念頭に調査することが肝要です。

 

リンク

日本弁護士連合会「企業等不祥事における第三者委員会ガイドライン
https://www.nichibenren.or.jp/library/ja/opinion/report/data/100715_2.pdf
三者委員会格付け委員会
http://www.rating-tpcr.net/