競落物件の登記名義が変更されていない場合の固定資産税

競落物件に関し、競落人が所有権移転登記をしないことにより固定資産税の支払いを免れているケースがあります。

 

 

そもそも、競売物件を落札した者が所有権を取得する時期は民事執行法79条により裁判所に代金を納付したときとされています。
民事執行法82条では、書記官が差押登記等の抹消と所有権移転登記を嘱託することとされているものの、登録免許税を納めなければ書記官も嘱託することができませんので、登録免許税が納められなければ、実体法上は所有権が移転しているものの、登記名義が前所有者のまま残されてしまいます。

地方税法343条1項では、固定資産税は固定資産の所有者に課すると定め、ここでいう所有者について、地方税法343条2項では、登記簿又は土地補充課税台帳若しくは家屋補充課税台帳に所有者として登記又は登録されている者をいうと定めています。これを台帳課税主義といいます。
つまり、固定資産税は登記名義人に課税されるため、前所有者は、既に競落されているにもかかわらず、固定資産税の支払い義務を課せられてしまうことになります。

 

なぜ競落人は登録免許税を納めないことが可能なのでしょうか。
通常の売買の場合、第三者に対して二重譲渡されて登記を備えられてしまうと所有権取得を対抗できない恐れがありますので、買受人は早急に所有権移転登記を行います。
ところが、差押登記が入った競落物件の場合、第三者が購入することが考えられません。
そうすると、競落人としては所有権移転登記を備えなくても所有権を失うリスクが少ないということになります。
それゆえ、競落人は実体法上の所有権を事実上確保したまま登録免許税を納めずに固定資産税の支払いを免れることができてしまうのです。

 

前所有者としては、競落人に対して不当利得返還請求ができますが(最高裁昭和46年(オ)第766号同47年1月25日第三小法廷判決・民集26巻1号1頁)、競落人と連絡が付かない場合もあり得ます。


このような場合には不当利得返還請求訴訟を提起して判決を得たうえで、債権者代位で所有権移転登記をして競落物件を差し押さえることも考えられます。