冒認特許に関する「特許を受ける権利」の譲渡

冒認出願がなされた場合において、真の発明者から「特許を受ける権利」の譲渡を受けることがあります。例えば、従業員の発明について会社が「特許を受ける権利」の譲渡を受けて、冒認出願者に対して訴訟提起する場合が考えられます。

 

ところで、特許法34条4項の「特許出願後における特許を受ける権利の承継は、相続その他の一般承継の場合を除き、特許庁長官に届け出なければ、その効力を生じない」と定められています。そうすると、同一発明について特許出願後である以上、真の発明者からの「特許を受ける権利」の譲渡についても特許庁長官に届け出なければならないようにも思われます。

 

しかし、同条項は、特許出願中における権利変動を特許庁が把握できないとすれば混乱が生じるために設けられたと考えられ、特許出願後であって特許登録前の特許を受ける権利の譲渡がなされた場合の権利変動を想定したものであり、特許登録後の特許を受ける権利の譲渡や冒認出願による場合を想定していないものと思われます。

 

この点に関して言及した書籍を確認することができませんでしたが、「実務詳解特許関係訴訟第2版」髙部眞規子著の388頁においても、発明者から特許を受ける権利を譲り受けた旨を主張立証すれば要件事実として足りるとされ、届出は要件事実として記載されていないことからすると、当然に不要であると理解されているものと思われます。