伝聞法則のポイント(平成27年決定での要証事実の認定方法)②

以前に投稿した伝聞法則の記事では、平成17年の最高裁決定を中心に実質的な要証事実の分析手法を説明しました。

 

tangleberry.hatenablog.com

 

この記事に関連し、最高裁平成27年2月2日決定(以下「平成27年決定」といいます。)では、検察官の設定した立証趣旨とは異なる要証事実が認定されましたのでご紹介します。これは平成17年決定の流れを汲む決定と理解して差し支えないでしょう。

 

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数理法務概論 - Analytical Methods for Lawyers

久しぶりに刺激的な書籍に出会いました。 

「数理法務概論」はアメリカのロースクール等で使用されているテキストの翻訳で、経済学、ファイナンス、会計、統計等の基礎が説明されています。難解そうなタイトルではありますが、本文は多数の事例を挙げながら丁寧に説明されていますので、通読することで法律家として必要な分析手法を学ぶことができます。翻訳ではありながら平易に書き下されていて非常に読みやすく、驚きました。

弁護士は、結論に影響を及ぼすあらゆる事態を想定して事件方針をクライアントに提示する必要があります。もっとも、その方針を決定する際には直感的な要素も含まれていますので、これを経済学的観点から裏打ちするためには本書で論じられている知識が不可欠と考えます。

 

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【目次】

第1章 決定分析

第2章 ゲームと情報

第3章 契約

第4章 会計

第5章 ファイナンス

第6章 ミクロ経済学

第7章 法の経済分析

第8章 統計分析

第9章 多変数統計

 

 

 

自然血縁関係と父子関係

凍結受精卵と父子関係に関する報道

 

大阪高等裁判所は、平成30年4月26日、男性の妻が凍結保存していた受精卵を男性に無断で利用して子を出産したことを受け、男性が提起した親子関係の不存在確認訴訟の控訴審において、男性の請求を却下した奈良家裁の一審判決を支持し、男性の控訴を棄却しました。

この件に関しては「凍結受精卵で出産、2審も「父子でない」認めず」(読売新聞)といったミスリードな題名の記事が多く、一切争うことができないのかと驚いた方も多いのではないかと思います。判決文にあたることができていないため、理由の詳細は不明ですが、従前の最高裁の見解もふまえると、①嫡出否認の訴えによって父子関係を否定することは可能であるものの、②親子関係不存在確認訴訟という手法によっては父子関係を否定することはできないと判示したものと推察します。つまり、男性に「父子でない」という主張の機会が認められなかったという判決ではないと思われ、この点で記事の題名はミスリードと考えます。 

 

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会社分割と債権者保護手続

会社分割

会社分割とは、ある会社がその事業に関して有する権利義務の全部または一部を他の会社に承継させることをいいます。このうち、吸収分割とは、株式会社又は合同会社がその事業に関して有する権利義務の全部又は一部を分割後他の会社に承継させることをいいます(会社法2条29号)。新設分割とは、一又は二以上の株式会社又は合同会社がその事業に関して有する権利義務の全部又は一部を分割により設立する会社に承継させることをいいます(会社法2条30号)。

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印紙税

印紙税とは

 

印紙税とは、経済社会における各種の取引に伴って作成される文書に対し、その作成者に課される国税をいい、課税文書を作成した際に課される税金です。印紙税は、課税文書の作成者が(印紙税法3条1項)、指定の金額の収入印紙を文書に貼り付け(印紙税法8条1項)、これに消印することにより納付します(印紙税法8条2項)。

 

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事業移転手法の比較

事業移転の手法

 

事業を移転するためには、①吸収分割(会社法2条29号)という手法と、②事業譲渡の手法を用いることが考えられます。会社の事業を他の会社に移転するという点で同様の経済的効果を持つものですが、要件が異なり、その簡便さや迅速さを重視する場合、②事業譲渡の手法を用いることが多いように思います。他方で、事業を譲り受ける会社において、すぐに金銭を準備することが困難な場合、承継会社の株式を対価として用いることができる①会社分割の手法をとることも考えられます。その要件と効果をニーズと比較して適当な手法を選択する必要があります。

 

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