伝聞法則のポイント(平成27年決定での要証事実の認定方法)②
数理法務概論 - Analytical Methods for Lawyers
久しぶりに刺激的な書籍に出会いました。
「数理法務概論」はアメリカのロースクール等で使用されているテキストの翻訳で、経済学、ファイナンス、会計、統計等の基礎が説明されています。難解そうなタイトルではありますが、本文は多数の事例を挙げながら丁寧に説明されていますので、通読することで法律家として必要な分析手法を学ぶことができます。翻訳ではありながら平易に書き下されていて非常に読みやすく、驚きました。
弁護士は、結論に影響を及ぼすあらゆる事態を想定して事件方針をクライアントに提示する必要があります。もっとも、その方針を決定する際には直感的な要素も含まれていますので、これを経済学的観点から裏打ちするためには本書で論じられている知識が不可欠と考えます。
【目次】
第1章 決定分析
第2章 ゲームと情報
第3章 契約
第4章 会計
第5章 ファイナンス
第6章 ミクロ経済学
第7章 法の経済分析
第8章 統計分析
第9章 多変数統計
自然血縁関係と父子関係
凍結受精卵と父子関係に関する報道
大阪高等裁判所は、平成30年4月26日、男性の妻が凍結保存していた受精卵を男性に無断で利用して子を出産したことを受け、男性が提起した親子関係の不存在確認訴訟の控訴審において、男性の請求を却下した奈良家裁の一審判決を支持し、男性の控訴を棄却しました。
この件に関しては「凍結受精卵で出産、2審も「父子でない」認めず」(読売新聞)といったミスリードな題名の記事が多く、一切争うことができないのかと驚いた方も多いのではないかと思います。判決文にあたることができていないため、理由の詳細は不明ですが、従前の最高裁の見解もふまえると、①嫡出否認の訴えによって父子関係を否定することは可能であるものの、②親子関係不存在確認訴訟という手法によっては父子関係を否定することはできないと判示したものと推察します。つまり、男性に「父子でない」という主張の機会が認められなかったという判決ではないと思われ、この点で記事の題名はミスリードと考えます。
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