忘恩行為による贈与の撤回

贈与の撤回の可否

 

贈与契約は諾成契約であるものの、書面によらない贈与、つまり口頭で贈与の約束をしても贈与者はいつでも撤回することができます(民法550条)。しかし、既に履行された部分については撤回できません(民法550条但書)。そうすると、口頭で贈与すると約束した目的物を実際に受贈者に渡してしまってから「やっぱり返して欲しい」と主張することは許されないのが原則ということになります。しかし、次のとおり、書面による贈与である場合や、さらに履行が終わった場合であっても、例外的に撤回できることがあり得ます。

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エスクローサービスに対する規制

エスクローサービスとは

商取引に際し、買主から信頼できる第三者に代金を預託させ、商品や役務の提供の完了が確認された段階で第三者から代金を売主に支払うという第三者預託のサービスを「エスクローサービスと」いいます。近年ではインターネット上でユーザー同士の商取引をサポートするサービスが普及しました。これに伴い、ユーザー同士での資金決済の安全性を高めるためにエスクローサービスも急速に普及しています。ユーザー同士の商取引を仲介するタイプのインターネットビジネスを展開する場合には、エスクローサービスに対する法規制について確認する必要があります。

 

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「なぜ悪い人の弁護をするのか」という質問

弁護士だと名乗ると「なぜ悪い人の弁護をするのか。」と質問されることがあります。

学生時代に弁護士を目指すと話した際、祖母から同じような質問をされて答えに窮したことがあります。教科書通りに「適正手続の理念」を説明しても抽象的過ぎて伝わりにくいのです。今では自分なりの説明ができるようになりました。わかりやすさだけを重視し刑罰の処罰根拠に照らせば不正確な部分もありますが、概ね次のように答えています。

 

「その人が本当に悪い人かどうか、誰にも分からないからだよ。単に本人が口下手で悪者だと誤解されていて、ちゃんと説明すれば誰だって同じような行動をとったとみんなに納得してもらえるかもしれない。誤解されたまま処罰されることが絶対に起きないように弁護士が必要とされている。本人の弁解を最大限代弁して、それでも裁判の中で真の悪者だとされたなら、それは適切に処罰されなければならない。」

 

このように説明すると、何となくでも弁護士の職責を理解してもらえているように思います。

相手方が郵便物を受領しない場合の意思表示の方法

法律事務所では一般的に用いられる手法ですが、企業の法務部の方でご存知でない方も多いように思われますので、「相手方が郵便物を受領しない場合の意思表示の方法」をご紹介します。

 

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示談での三者間相殺合意の定め方

民法が規定する相殺(民法505条)では、対立する債権を有する2当事者間の相殺を予定しており3人以上の当事者間での相殺を予定していませんが、契約自由の原則からして、3人以上の当事者間で対立関係にない債権同士を相殺を合意することも可能であると理解されています。

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マンション建替え手続

マンション建替え手続の概略

 マンションの建替えは居住者の住環境に重大な影響を与えるため、区分所有法上、極めて厳格な手続が規定されています。建替えを実施するにあたっては、まず手続の概略について確認し、再建建物の基本設計、取壊し及び再建建物の建築に要する費用等について計画を策定した上で、各区分所有者に集会の招集通知を発送することになります。その後、説明会を開催し、決議を実施します。可決された場合には、賛成者から非賛成者に対して区分所有権の売り渡しを請求することができます。賛成者が区分所有権の全戸を確保した段階で、実際に建替え工事に着手することが可能となります。これらの手続を経て、実際に解体工事に着手するまで長期間を見込む必要があります。 

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