改正債権法の勉強におすすめの書籍

平成32年(2020年)4月1日、民法の一部を改正する法律(改正債権法)が施行されます。民法という重要な法律の120年ぶりの大改正ですので、法律実務に携わる者としては正確に対応できるように入念な準備する必要があります。契約書作成や契約締結に関するアドバイスを行うにあたっても、改正債権法の内容を把握しておく必要があります。ここでは勉強のために役立つ書籍を紹介します。 

 条文・新旧対照表

 

⑴ 新旧の条文を見比べながら確認するにあたっては、商事法務の「民法(債権関係)改正法新旧対照条文」(定価1080円)が読みやすく便利です。上下段で比較対照できますので、空欄に書き込みながら自学するのに適しています。

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⑵ 改正債権法に関する新旧対照表は法務省のHP上で公開されていますので、紙質にこだわらない場合には、印刷して冊子として利用することも可能です。

法務省:民法の一部を改正する法律(債権法改正)について

 

⑶ 新民法のみを冊子で確認したい場合には、東京都弁護士協同組合編集の携帯実務六法2018年度版(定価2800円)は本体に現行民法が搭載され、改正後の民法のみが掲載された別冊が付いているのでお勧めです。別冊のうち改正された条文には※印が付されています。有斐閣ポケット六法平成30年版では改正民法が搭載され、条文ごとに現行民法を併記していますので、比較しながら読むには適していますが一覧性に乏しくなったという印象です。

 

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改正債権法の内容を学習する 

 

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⑴ 潮見佳男「民法(債権関係)改正法の概要」きんざい

京都大学教授であり、法制審議会民法(債権関係)部会の幹事である潮見佳男教授(通称しおみん)の著書です。非常にお勧めです。逐条形式でコンパクトに改正債権法の全体像がまとめられていますし、改正に携わっているだけあり説明も非常に読みやすく重宝しています。全体像の把握を目的とする場合には買って損はないと思います。なお、写真右側の書籍は「改正法の概要」です。最新版は赤い表紙の「改正法の概要」ですのでご注意ください。最新版では装丁も上質な素材に置き換わっています。

 

⑵ 日本弁護士連合会「実務解説改正債権法」弘文堂

手許にあると便利です。条文の順番に従い、淡々と中立的に改正債権法の内容が説明されていますので、辞書的に使用するのに向いています。背景、趣旨、実務への影響の3項目から説明されています。このうち「実務への影響」という項目では、単に判例法理を明文化しただけであるのか、それとも実務に変更を伴うものであるのかが端的に記載されています。この項目を確認し、重要なポイントを見極めるだけでも意味があります。但し、淡々としすぎている嫌いもあり、体系的に理解を深めるには向いていないように思います。

 

⑶ 潮見佳男編「Before/After 民法改正」弘文堂

潮見佳男教授が編者となり、複数の民法学者や実務家が232の事例を通じて、現行民法の論点と改正債権法による影響を説明した書籍です。現行民法の理解を再確認しつつアップデートするという点では、法曹関係者や学生が勉強するにはうってつけです。但し、条文本文の引用や詳しい判例解説は省かれていることも多いので、新旧対照表や、前掲の解説本と併用することになります。事例ごとに重複する記載も見受けられますので、時間がある人に。

 

実務に反映する

 

 

野村豊弘監修「民法改正で変わる!契約実務チェックポイント」日本加除出版

法務部の社員等、いち早く実務への影響を把握したい方にお勧めです。第1部では、契約成立段階、履行段階、不履行段階、債権回収段階、典型契約の各論に項目立てられ、第2部では契約類型ごとに契約書案が掲載されていますので、実務への影響が一目瞭然です。コンパクトでありながら、網羅されていますので、手に取りやすく、かつ実用的です。

 

以上分類したとおり、①改正された条文の確認、②改正の体系的理解、③改正に伴う実務への影響という3段階で学習することが有益と考えています。
法務部に所属されている方等、現場実務への影響をいち早く把握すべき立場にあるか否かにより比重の置き方が異なるかと思います。

 

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