司法研修所編『デリバティブ(金融派生商品)の仕組み及び関係訴訟の諸問題』一般社団法人法曹会/デリバティブ取引を本質から理解するために

デリバティブ金融派生商品)の仕組み及び関係訴訟の諸問題」の書評です。

 

デリバティブ金融派生商品)関連訴訟のために購入しました。

個人投資家は証券会社の商品説明が不適切であるために思わぬリスクを抱えた商品を購入させられてしまい、多大な損害を被ることがあります。

このような場合、説明義務(金商法3条)違反や適合性原則(金商法40条1号)違反を主張することになりますが、そもそも、当該商品がどのような設計の商品であるのかを掘り下げて、当該商品の本質部分や説明義務の核心部分を特定して理解しなければ具体的に何の説明が必要であったのか、商品のリスクはどこにあるのかを適格に表現することができません。

とはいえ、弁護士でもデリバティブ取引の本質的な部分まで理解できている人は少数と思われます。本書の序章「本司法研究の問題意識」には「デリバティブの入門書とか概説書のようなものが多数市販されているが、その多くは金融実務家を対象としたものであり、どうしても金融工学に偏った内容になっていたり、我々が本当に知りたい基本の部分が当然の前提として省略されていることが少なくないというのが正直な印象であり、本司法研修報告はそうした点にも可能な限り配慮したつもりである」(本書2頁)と記載されています。このとおり、本書ではデリバティブの本質から書き起こされています。また、各用語の意味も丁寧に説明されていますので、そもそもデリバティブとは何たるかを理解するための資料としては最適です。

 

裁判官に問題となる商品のリスク設計を言語化して説明するうえで大変参考になりました。

デリバティブ関連訴訟に携わるにあたっては必携でしょう。