印紙税

印紙税とは

 

印紙税とは、経済社会における各種の取引に伴って作成される文書に対し、その作成者に課される国税をいい、課税文書を作成した際に課される税金です。印紙税は、課税文書の作成者が(印紙税法3条1項)、指定の金額の収入印紙を文書に貼り付け(印紙税法8条1項)、これに消印することにより納付します(印紙税法8条2項)。

 

 

印紙を貼付しなければならない課税文書とは

 

課税文書は、次の3つの要件を全て満たす文書をいいます(印紙税法基本通達2条)。

印紙税法別表第1の課税物件表の課税物件欄に掲げられている文書(20種類)

②当事者の間において課税事項を証明する目的で作成された文書

印紙税法5条各号の非課税文書でないこと

なお、課税文書にあたらず、非課税文書にもあたらない文書のことを「不課税文書」と呼びます。

 

印紙の貼付の要否の判断方法

 

印紙を貼付しなければならないかどうかを判断するにあたっては、課税文書にあたるかどうか、印紙税額はいくらかになるかという2点を検討する必要があります。この2点を簡易的に判断するにあたっては、次の国税庁のHPが参考になります。

国税庁印紙税額一覧表

http://www.nta.go.jp/publication/pamph/inshi/pdf/zeigaku_ichiran.pdf

 

課税文書にあたるか

課税文書に該当するかどうかは、当該文書の体裁のみから形式的に判断することはできません。その文書を、全体をひとつとして判断するのみでなく、文書に記載されている個々の内容についても判断し、また、単に文書の名称又は呼称及び形式的な記載文言によることなく、その記載文言の実質的な意義に基づいて判断する必要があり(印紙税法基本通達3条1項)、判断が容易でない場面もあります。

例えば、建物賃貸借契約書自体は不課税文書ですが、敷金の受領文言がある場合には、第17号の2文書に該当し、課税文書となります。このように、内容に照らして実質的な文書の趣旨を検討する必要があります。個別の判断に関しては、国税庁がHP上で公開しているタックスアンサーが参考になるでしょう。業務委託契約書の場合、準委任契約であるのか請負契約であるのか、契約内容の実質から検討する必要があるため、判断が困難な場合もあります。

 

印紙税額はいくらか

 

印紙税額は、記載された契約金額に応じて異なるものがあります。このような税率を階級定額税率といいます。階級定額税率による課税文書の場合は、契約金額がいくらであるのかを検討する必要があります。契約金額とは、当該文書において契約の成立等に際して直接証明の対象となっているものとをいいます(印紙税法基本通達23条)。

例えば、土地賃貸借契約書に定められた賃料額は、土地の賃借権の設定に関する契約書としてみた場合に直接関係しないため、契約金額にあたりません。他に権利金等の記載がなければ「契約金額の記載のないもの」として200円の印紙を貼付することになります。

月額単価の記載があるだけで契約期間の記載がないような場合、記載金額を計算することができませんので、記載金額がないものとして扱われます。

 

消費税額等については、消費税額等が区分記載されているとき又は税込価格及び税抜価格が記載されていることにより、その取引にあたって課税される消費税額等が明らかになる場合には、その消費税額等を記載金額に含めないこととされています。但し、この取扱いは次の3つの文書に限られています(「消費税法の改正等に伴う印紙税の取扱いについて」通達平元.3.10付間消3-2)。

①第1号文書(不動産の譲渡等に関する契約書)

②第2号文書(請負に関する契約書)

③第17号文書(金銭又は有価証券の受取書)

 

同一文書を作成した場合

 

同一内容の文書を2通作成した場合でも、印紙税法上は、2通とも印紙を貼付しなければなりません(印紙税法基本通達19条)。単に原本のコピーを作成する場合には、課税文書に該当しないため、印紙税を節約することが可能です。但し、コピーに原本と相違ないことの契約当事者の証明があるような場合には、課税文書に該当します。

 

電子契約の印紙税

 

印紙税は、あくまで課税文書の作成の時に課せられる税金であり、印紙税法に規定する課税文書の「作成」とは、印紙税法基本通達第44条により「単なる課税文書の調製行為をいうのでなく、課税文書となるべき用紙等に課税事項を記載し、これを当該文書の目的に従って行使することをいう」ものとされ、課税文書の「作成の時」とは、相手方に交付する目的で作成される課税文書については、当該交付の時であるとされているため、課税文書を電磁的記録に変換した媒体を電子メールで送信して「電子契約」を成立させたとしても、課税文書を作成したことにはならず、課税されないと解することができます。このような観点から、請負契約の成立を証する注文書の現物の交付に替えて、PDFファイル等の電磁的記録に変換した媒体を、電子メールを利用して送信した時は、課税文書を作成したことにはならないと解して差し支えないかという文書照会にて、福岡国税局審理官は、「貴見のとおりで差し支えありません」と回答しています。

国税庁/取引等に係る税務上の取扱い等に関する事前照会

http://www.nta.go.jp/about/organization/fukuoka/bunshokaito/inshi_sonota/081024/01.htm

今後、更に電子契約が普及することが見込まれているため、電子契約の場合に課税するための法改正の方策が検討されています。

国税庁/最近における印紙税の課税回避等の動きと今後の課税の在り方

https://www.nta.go.jp/about/organization/ntc/kenkyu/ronsou/42/souma/mokuji.htm

 

印紙税の納付忘れや過大納付

 

印紙を貼り忘れた場合、貼付しなかった印紙税の額とその2倍に相当する金額との合計額(つまり印紙税額の3倍の額)の過怠税が徴収されます。税務調査の際に印紙の貼付が確認されますが、この際に指摘を受けることがあり得ます。但し、自主的に不納付申告を行なった場合には、貼付しなかった印紙税の額とその0.1倍に相当する金額との合計額(つまり印紙税額の1.1倍の額)の過怠税に軽減されます。なお、消印がなされていない場合には、消されていない印紙の額に相当する額が過怠税の額となります。過怠税は法人税法上損金算入することもできません。

なお、偽りその他不正の行為により印紙税を免れ、又は免れようとした者については、「3年以下の懲役若しくは100万円以下の罰金に処し、又はこれを併科」する旨の罰則(印紙税21条1項1号)、また、相当印紙の貼り付けをしなかった者については「1年以下の懲役若しくは50万円以下の罰金に処し、又はこれを併科」する旨の罰則(印紙税法22条1号)、印紙の消印をしなかった者について「30万円以下の罰金に処する」旨の罰則(印紙税法23条1号)が定められています。

他方、印紙を過大に貼付してしまった等の場合には、印紙税の過誤納金として還付の対象となります(印紙税法14条1項)。具体的には次のものが還付対象となります。

①請負契約書や領収書などの印紙税の課税文書に貼り付けた収入印紙が過大となっているもの

②委任契約書などの印紙税の課税文書に該当しない文書を印紙税の課税文書と誤認して収入印紙を貼り付けてしまったもの

印紙税の課税文書の用紙に収入印紙を貼り付けたものの、使用する見込みのなくなったもの

印紙税法による還付を受ける場合には、「印紙税過誤納確認申請書」に必要事項を記入のうえ、納税地の税務署長に提出する必要があります。

 

【参考】 

国税庁/印紙税額一覧表

国税庁/印紙税法基本通達 

 

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