エスクローサービスに対する規制

エスクローサービスとは

商取引に際し、買主から信頼できる第三者に代金を預託させ、商品や役務の提供の完了が確認された段階で第三者から代金を売主に支払うという第三者預託のサービスを「エスクローサービスと」いいます。近年ではインターネット上でユーザー同士の商取引をサポートするサービスが普及しました。これに伴い、ユーザー同士での資金決済の安全性を高めるためにエスクローサービスも急速に普及しています。ユーザー同士の商取引を仲介するタイプのインターネットビジネスを展開する場合には、エスクローサービスに対する法規制について確認する必要があります。

 

 

エスクローサービスに対する規制

エスクローサービスを実施する場合、資金決済法37条により資金移動業の登録が必要です。

資金移動業とは、銀行等以外の者が為替取引を業として営むことをいいます(資金決済法2条2項)。ここでいう「為替取引」とは、最高裁決定平成13年3月12日刑集55巻2号97頁では、銀行法2条2項2号に定められた「為替取引を行うこと」という要件に関して、「顧客から隔地者間で直接現金を輸送せずに資金を移動する仕組みを利用して資金を移動することを内容とする依頼を受けて、これを引き受けること、又はこれを引き受けて遂行することをいう」と説明しています。

エスクローサービスも「直接現金を輸送せずに資金を移動する」ものである以上、資金移動業の登録が必要です。

資金移動業者として登録をすることができるのは、株式会社か、外国資金移動業者に限られます。また、財産的基礎を有すること、業務遂行体制、法令等の遵守体制が整備されている必要があるほか、いくつかの登録拒否事由に該当しないことが求められます。

資金移動業における決済金額は100万円以下に限定されています(資金決済法施行令2条)。

また資金移動業者は犯罪収益移転防止法の特定事業者に該当し(犯罪収益移転防止法2条2項30号)、取引に際して同法に基づく本人確認義務も課せられることにも注意が必要です。

この登録を受けずに資金移動業を営んだ場合、3年以下の懲役若しくは300万円以下の罰金に処せられます。

 

決済代行サービスに対する規制 

エスクローサービスとは異なり、いわゆる決済代行サービス(収納代行サービス、代金引換サービスともいいます。)は、「売主から代金の受領権限が付与されている」という点が「為替取引」と異なり、売主から代金の受領権限が付与されている以上、単に「資金を移動する仕組み」を提供する者ではなく、資金移動業に該当しないと論じられています。そこで、エスクローサービスに対する法規制を受けないビジネスを展開したい場合には、この決済代行サービスの方法をとることが考えられます。この場合、売主から代金の受領権限を付与される点を利用規約等で明確化する必要があります。

もっとも、決済代行サービスについても何らかの規制を要するという指摘もあり、今後、資金決済法が改正される可能性があります。ビジネスを実施される前に法規制の有無を弁護士等の専門家に相談されるべきでしょう。

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