誤振込への法的対応
誤振込をしてしまった場合、振込先口座の金融機関、支店、口座番号については把握できるものの振込先口座の名義人の漢字氏名や住所や連絡先が不明である場合が殆どです。銀行実務では、振込依頼人が口座を開設している仕向銀行に対して、振込先口座が開設されている被仕向銀行への組戻依頼を行い、振込先口座の名義人が組戻に応じる場合には、組戻手続により処理することになります。ところが、被仕向銀行が名義人と連絡をとることができない場合には組戻手続をとることができません。被仕向銀行は、原則として保有する個人情報を第三者に開示しませんので、誤振込をしてしまった振込人としては対応に窮することがあります。このような場合には、弁護士に相談して回収を依頼する必要があります。
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特許法74条1項に基づく特許権移転登録請求訴訟の要件事実
平成23年に特許法が改正されるまでの間、冒認出願されて発明者でない者に特許権を取得されてしまった場合、真の発明者としては、無効審判を請求する他なく、和解に持ち込んで特許権を取り戻すことを試みるしかありませんでした。無効とすれば誰でも特許権を利用できるようになるため、真の救済が果たされないという点で制度的問題を抱えていました。この点に関して最高裁(平成13年6月12日判決・民集55巻4号793頁)は、特殊事例において取戻請求を認めましたが、なお一般的には認められないとの見解もありました。このような経緯から、平成23年に特許法が改正され、新たに「真の発明者の冒認者に対する特許権移転登録請求」が認められました(特許法74条1項)。この請求の対象となる特許権は、平成24年4月1日以降の出願に基づく特許権に限られます。これを「発明者取戻権」と呼ぶ学者もいます。
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