平等院の鳳凰堂にまつわる販売差し止め請求について

平等院鳳凰堂を撮影した写真を使用したパズルの販売元会社に対し、平等院京都地裁に販売差し止めなどを求めて訴訟提起した旨が報道されています。

 

 

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鳳凰堂は10円玉にもデザインされた世界遺産です。法律家としては非常に難しい問題であると考えます。差し止めを求めるためにどのような法的構成が考えられるか、検討したいと思います。
なお、この事件に関して記録を閲覧している訳ではありませんので、全て報道等に基づく推測であることを御了承ください。

 

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誤振込への法的対応

誤振込をしてしまった場合、振込先口座の金融機関、支店、口座番号については把握できるものの振込先口座の名義人の漢字氏名や住所や連絡先が不明である場合が殆どです。銀行実務では、振込依頼人が口座を開設している仕向銀行に対して、振込先口座が開設されている被仕向銀行への組戻依頼を行い、振込先口座の名義人が組戻に応じる場合には、組戻手続により処理することになります。ところが、被仕向銀行が名義人と連絡をとることができない場合には組戻手続をとることができません。被仕向銀行は、原則として保有する個人情報を第三者に開示しませんので、誤振込をしてしまった振込人としては対応に窮することがあります。このような場合には、弁護士に相談して回収を依頼する必要があります。

 

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改正債権法の勉強におすすめの書籍

平成32年(2020年)4月1日、民法の一部を改正する法律(改正債権法)が施行されます。民法という重要な法律の120年ぶりの大改正ですので、法律実務に携わる者としては正確に対応できるように入念な準備する必要があります。契約書作成や契約締結に関するアドバイスを行うにあたっても、改正債権法の内容を把握しておく必要があります。ここでは勉強のために役立つ書籍を紹介します。 

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特許法74条1項に基づく特許権移転登録請求訴訟の要件事実

平成23年に特許法が改正されるまでの間、冒認出願されて発明者でない者に特許権を取得されてしまった場合、真の発明者としては、無効審判を請求する他なく、和解に持ち込んで特許権を取り戻すことを試みるしかありませんでした。無効とすれば誰でも特許権を利用できるようになるため、真の救済が果たされないという点で制度的問題を抱えていました。この点に関して最高裁(平成13年6月12日判決・民集55巻4号793頁)は、特殊事例において取戻請求を認めましたが、なお一般的には認められないとの見解もありました。このような経緯から、平成23年に特許法が改正され、新たに「真の発明者の冒認者に対する特許権移転登録請求」が認められました(特許法74条1項)。この請求の対象となる特許権は、平成24年4月1日以降の出願に基づく特許権に限られます。これを「発明者取戻権」と呼ぶ学者もいます。

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共有特許権の共有物分割請求と不実施補償料

特許権が共有である場合、共有権者の1人は他の共有権者に対し、共有物分割請求(民法256条)を行使することが可能です。特許登録令33条において、特許原簿に分割禁止契約を記載することが可能であると定められていることからも、分割そのものは禁止されていないことが裏付けられています*1

*1:中山信弘特許法」第2版306頁

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再雇用後の労働条件の相違(最高裁平成30年6月1日判決・長澤運輸事件)

再雇用後における労働条件の相違と労働契約法20条に関する問題について、平成30年6月1日、最高裁判決が言い渡されました(平成29年(受)第442号 地位確認等請求事件・長澤運輸事件)。なお、同日、契約社員と正社員の労働条件の相違と労働契約法20条に関する問題についても最高裁判決が言い渡されていますが(平成28年(受)第2099号、第2100号未払賃金支払請求事件・ハマキョウレックス事件)、本稿では長澤運輸事件についてのみ紹介します。

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第三者委員会の委員に求められる職責

 企業が不祥事を起こした場合、企業は弁護士等に依頼して第三者委員会が立ち上げさせ、当該不祥事の原因と今後の対策を分析させて公表することで信用を回復させようとすることがあります。外部の専門家が調査に入り、直接の原因から企業体質等の間接的な原因まで真相を究明し、これをふまえた今後の対策を会社と世間に公表し、これを企業が受け入れることで株主や取引先や消費者や従業員や社会からの信用を取り戻すことができます。

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